はたいそうよろこんで、うちへ帰《かえ》るのも忘《わす》れていました。そのうちにだんだん暗《くら》くなってきたものですから、おじいさんは、
「今日《きょう》はお陰《かげ》で一|日《にち》おもしろかった。日の暮《く》れないうちに、どれ、おいとまとしましょう。」
と言《い》って、立《た》ちかけました。すずめは、
「まあ、こんなむさくるしいところですけれど、今夜《こんや》はここへとまっていらっしゃいましな。」
と言《い》って、みんなで引《ひ》きとめました。
「せっかくだが、おばあさんも待《ま》っているだろうから、今日《きょう》は帰《かえ》ることにしましょう。またたびたび来《き》ますよ。」
「それは残念《ざんねん》でございますこと、ではおみやげをさし上《あ》げますから、しばらくお待《ま》ち下《くだ》さいまし。」
と言《い》って、すずめは奥《おく》からつづらを二つ持《も》ってきました。そして、
「おじいさん、重《おも》いつづらに、軽《かる》いつづらです。どちらでもよろしい方《ほう》をお持《も》ち下《くだ》さい。」
と言《い》いました。
「どうもごちそうになった上、おみやげまでもらってはすまないが、せっかくだからもらって帰《かえ》りましょう。だがわたしは年《とし》をとっているし、道《みち》も遠《とお》いから、軽《かる》い方《ほう》をもらっていくことにしますよ。」
こう言《い》っておじいさんは、軽《かる》いつづらを背負《せお》わせてもらって、
「じゃあ、さようなら。また来《き》ますよ。」
「お待《ま》ち申《もう》しております。どうか気《き》をつけてお帰《かえ》り下《くだ》さいまし。」
と言《い》って、すずめは門口《かどぐち》までおじいさんを送《おく》って出ました。
三
日が暮《く》れてもおじいさんがなかなかもどらないので、おばあさんは、
「どこへ出かけたのだろう。」
とぶつぶつ言《い》っているところへ、おみやげのつづらを背負《せお》って、おじいさんが帰《かえ》って来《き》ました。
「おじいさん、今《いま》ごろまでどこに何《なに》をしていたんですね。」
「まあ、そんなにおおこりでないよ。今日《きょう》はすずめのお宿《やど》へたずねて行《い》って、たくさんごちそうになったり、すずめ踊《おど》りを見《み》せてもらったりした上に、このとおりりっぱなおみやげをもらって来《き》たのだよ。」
こう言《い》ってつづらを下《お》ろすと、おばあさんは急《きゅう》ににこにこしながら、
「まあ、それはようございましたねえ。いったい何《なに》が入《はい》っているのでしょう。」
と言《い》って、さっそくつづらのふたをあけますと、中から目のさめるような金銀《きんぎん》さんごや、宝珠《ほうじゅ》の玉《たま》が出てきました。それを見《み》るとおじいさんは、とくいらしい顔《かお》をして言《い》いました。
「なにね、すずめは重《おも》いつづらと軽《かる》いつづらと二つ出《だ》して、どちらがいいというから、わたしは年《とし》はとっているし、道《みち》も遠《とお》いから、軽《かる》いつづらにしようといってもらってきたのだが、こんなにいいものが入《はい》っていようとは思《おも》わなかった。」
するとおばあさんは急《きゅう》にまたふくれっ面《つら》をして、
「ばかなおじいさん。なぜ重《おも》い方《ほう》をもらってこなかったのです。その方《ほう》がきっとたくさん、いいものが入《はい》っていたでしょうに。」
「まあ、そう欲《よく》ばるものではないよ。これだけいいものが入《はい》っていれば、たくさんではないか。」
「どうしてたくさんなものですか。よしよし、これから行《い》って、わたしが重《おも》いつづらの方《ほう》ももらってきます。」
と言《い》って、おじいさんが止《と》めるのも聞《き》かず、あくる日の朝《あさ》になるまで待《ま》たれないで、すぐにうちをとび出《だ》しました。
もう外《そと》はまっ暗《くら》になっていましたが、おばあさんは欲《よく》ばった一心《いっしん》でむちゃくちゃにつえをつき立《た》てながら、
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「舌切《したき》りすずめ、
お宿《やど》はどこだ、
チュウ、チュウ、チュウ。」
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と言《い》い言《い》いたずねて行きました。野《の》を越《こ》え、山を越《こ》えて、また野《の》を越《こ》えて、山を越《こ》えて、大きな竹《たけ》やぶのある所《ところ》へ来《き》ますと、やぶの中から、
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「舌切《したき》りすずめ、
お宿《やど》はここよ。
チュウ、チュウ、チュウ。」
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という声《こえ》がしました。おばあさんは「しめた。」と思《おも》って、声《こえ》のする
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