見《み》せ。」
 といいながら、娘《むすめ》のうしろからのぞきますと、そこには若《わか》い時《とき》のおかあさんそっくりの娘《むすめ》の顔《かお》がうつりました。
「ああ、それはお前《まえ》の姿《すがた》だよ。お前《まえ》は小《ちい》さい時《とき》からおかあさんによく似《に》ていたから、おかあさんはちっとでもお前《まえ》の心《こころ》を慰《なぐさ》めるために、そうおっしゃったのだ。お前《まえ》は自分《じぶん》の姿《すがた》をおかあさんだと思《おも》って、これまでながめてよろこんでいたのだよ。」
 こうおとうさんはいいながら、しおらしい娘《むすめ》の心《こころ》がかわいそうになりました。
 するとその時《とき》まで次《つぎ》の間《ま》で様子《ようす》を見《み》ていた、こんどのおかあさんが入《はい》って来《き》て、娘《むすめ》の手を固《かた》く握《にぎ》りしめながら、
「これですっかり分《わ》かりました。何《なん》というやさしい心《こころ》でしょう。それを疑《うたぐ》ったのはすまなかった。」
 といいながら、涙《なみだ》をこぼしました。娘《むすめ》はうつむきながら、小声《こごえ》で、
「お
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