くんくん鳴《な》らして、
「ふん、ふん、人くさい、人くさい。」
といいました。
「なあに、それはわたしが雀《すずめ》を焼《や》いて食《た》べたからさ。」
「そうか。そんなら少《すこ》し寝《ね》かしておくれ。あんまり駆《か》けてくたびれた。」
「おばあさん、おばあさん。寝《ね》るのは石の櫃《ひつ》にしようか、木の櫃《ひつ》にしようか。」
「石の櫃《ひつ》はつめたいから、木の櫃《ひつ》にしようよ。」
こう山姥《やまうば》はいって、木の櫃《ひつ》の中に入《はい》って寝《ね》ました。
山姥《やまうば》が櫃《ひつ》の中に入《はい》ると、女《おんな》は外《そと》からぴんと錠《じょう》を下《お》ろしてしまいました。そして石の櫃《ひつ》の中から女の子を出《だ》してやって、
「山姥《やまうば》を木の櫃《ひつ》の中に入《い》れてしまったから、もう大丈夫《だいじょうぶ》だ。」
といって、太《ふと》い錐《きり》を出《だ》して、火《ひ》の中につっ込《こ》んで真《ま》っ赤《か》に焼《や》きました。この焼《や》いた錐《きり》を木の櫃《ひつ》の上からさし込《こ》みますと、中で山姥《やまうば》が寝《ね》ぼけた声
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