、なんでも知ってて、
その上、来年のことまでわかって、
四十年さきまでみとおしの神わざ、
そのくせ、それをいうのがきらい、
ねえ、来年はどうなりますか、
なにかかわったことでもないか、
お国の大事か、ぼくの身の上、
やっぱり、おばあちゃん、なんにもいわない、
それでもせがむと、おいおいごきげん、
はじめのがんばり、いつものとおりさ、
もうひと押しだ、かわいい孫だ、
ぼくのたのみをきかずにいようか。

「ではいっぺんならかなえてあげる」
やっと承知で目がねを貸した。
「さて、どこなりとおおぜいひとの
あつまるなかへでかけていって
ごったかえしを、目がねでのぞくと、
とたんに、それこそカルタの札の
うらないみたいに、なんでも分かる
さきのさきまで、手にとるように。」

おれいもそこそこ、みたいがさきで、
すぐかけだしたが、さてどこへいく。
長町通《ランケリニエ》か、あそこはさむい、
東堤《エスデルガーデ》か、ペッ、くされ沼
それでは、芝居か、こりゃおもいつき、
出しものもよし――お客は大入。
――そこでまかり出た今夜の催し、
おばばの目がねをまずこうかけて、
さあながめます――お逃けなさる
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