ろと、サンドリヨンの着物から、頭のかざりものをしらべてみて、まあ、まあ、あれだけのりっぱな材料《ざいりょう》と、それをこしらえるりっぱな職人《しょくにん》とさえあれば、あしたにもさっそく、この型《かた》で、じぶんもこしらえさせてみよう、と考えていました。
王子は、サンドリヨンを、そのなかでいちばん名誉《めいよ》の上席《じょうせき》へ案内《あんない》して、それからまた、つれ出して、いっしょにダンスをはじめました。
サンドリヨンは、それはそれは、しとやかにおどったので、みんなは、いよいよびっくりしてしまいました。さて、けっこうなごちそうが、まもなく出ましたが、若い王子は、サンドリヨンの顔ばかりながめていて、ひとつものどにはとおりませんでした。
サンドリヨンはやがて、じぶんのきょうだいたちのいるところへ出かけて行って、そのそばに腰をかけて、王子からもらったオレンジや、レモンを分けてやったりして、それは、いろいろやさしいそぶりをみせました。けれど、ふたりは、それがたれだか分からなかったものですから、ただもうびっくりして、目ばかりくるくるさせていました。サンドリヨンは、こうしてきょうだいたちのごきげんをとっているうちに、時計が十二時十五分前を打ちました。するといきなり、サンドリヨンは、ほかのお客たちに、ていねいにあいさつをして、ふいと出て行ってしまいました。
四
さて、うちへかえると、サンドリヨンは、そこに待っていた妖女《ようじょ》にあって、たくさんお礼をいったのち、あしたもまた、ぜひぶとう会へやってくださいといってたのみました。それは、王子の熱心《ねっしん》なおのぞみであったからです。
こうして、サンドリヨンが、ぶとう会であったことを、妖女にせっせと話をしていますと、やがて、ふたりのきょうだいがかえって来て、こつ、こつ、戸をたたきました。サンドリヨンは、かけて行って、戸をあけてやりました。
「まあ、ずいぶん長く行っていらしったのね。」と、サンドリヨンはさけんで、あくびをして、目をこすって、のびをしました。それは、うたたねをしていて、たった今、目がさめたというようなふうでした。けれど、じつはふたりが出て行ってから、サンドリヨンは、まるっきりねたくもねられない気持だったのです。
「おまえさん、ダンスに行ったら、それはたいくつなんぞしなかったろうよ。
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