いて、うらやましがって、のこっている灰をかきあつめてざるに入れて、正直《しょうじき》おじいさんのまねをして、
「花咲かじじい、花咲かじじい、日本一の花咲かじじい、枯れ木に花を咲かせましょう」
と、往来《おうらい》をどなってあるきました。
 するとこんども、殿《との》さまがとおりかかって、
「こないだの花咲かじじいがきたな。また花を咲かせて見せよ」
といいました。欲《よく》ばりおじいさんは、とくいらしい顔をしながら、灰を入れたざるをかかえて、さくらの木に上がって、おなじように、
   「金のさくら、さらさら。
    銀のさくら、さらさら」
ととなえながら、やたらに灰をふりまきましたが、いっこうに花は咲きません。するうち、どっとひどい風が吹いてきて、灰は遠慮《えんりょ》なしに四方八方《しほうはっぽう》へ、ばらばら、ばらばらちって、殿さまやご家来《けらい》の目や鼻《はな》のなかへはいりました。そこでもここでも、目をこするやら、くしゃみをするやら、あたまの毛をはらうやら、たいへんなさわぎになりました。殿さまはたいそうお腹立《はらだ》ちになって、
「にせものの花咲かじじいにちがいない。ふとどき
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