うじゃうじゃ、きたないものが出てきて、うす[#「うす」に傍点]にあふれて、そとにこぼれ出して、やがて、台所《だいどころ》いっぱい、きたないものだらけになりました。
欲《よく》ばりおじいさんは、またかんしゃくをおこして、うす[#「うす」に傍点]をたたきこわして、薪《まき》にしてもしてしまいました。
正直《しょうじき》おじいさんは、うす[#「うす」に傍点]を返してもらいに行きますと、灰になっていましたから、びっくりしました。でも、もしてしまったものはしかたがありませんから、がっかりしながら、ざるのなかに、のこった灰をかきあつめて、しおしおうちへ帰りました。
「おばあさん、白《しろ》のまつの木が、灰になってしまったよ」
こういっておじいさんは、お庭のすみの白のお墓《はか》のところまで、灰をかかえて行ってまきますと、どこからか、すうすうあたたかい風が吹いてきて、ぱっと、灰をお庭いっぱいに吹きちらしました。するとどうでしょう、そこらに枯れ木のまま立っていたうめの木や、さくらの木が、灰をかぶると、みるみるそれが花になって、よそはまだ冬のさなかなのに、おじいさんのお庭ばかりは、すっかり春げしきになってしまいました。
おじいさんは、手をたたいてよろこびました。
「これはおもしろい。ついでに、いっそ、ほうぼうの木に花を咲かせてやりましょう」
そこで、おじいさんは、ざるにのこった灰をかかえて、
「花咲かじじい、花咲かじじい、日本一の花咲かじじい、枯れ木に花を咲かせましょう」
と、往来《おうらい》をよんであるきました。
すると、むこうから殿《との》さまが、馬にのって、おおぜい家来《けらい》をつれて、狩《かり》から帰ってきました。
殿さまは、おじいさんをよんで、
「ほう、めずらしいじじいだ。ではそこのさくらの枯れ木に、花を咲かせて見せよ」
といいつけました。おじいさんは、さっそくざるをかかえて、さくらの木に上がって、
「金のさくら、さらさら。
銀のさくら、さらさら」
といいながら、灰をつかんでふりまきますと、みるみる花が咲き出して、やがていちめん、さくらの花ざかりになりました。殿さまはびっくりして、
「これはみごとだ。これはふしぎだ」
といって、おじいさんをほめて、たくさんにごほうびをくださいました。
するとまた、おとなりの欲《よく》ばりおじいさんが、それをき
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