ばりおじいさんは、
「うん、ここか。しめたぞ、しめたぞ」
といいながら、ほりはじめましたが、ほっても、ほっても出てくるものは、石ころやかわらのかけらばかりでした。それでもかまわず、やたらにほって行きますと、ぷんとくさいにおいがして、きたないものが、うじゃうじゃ、出てきました。欲ばりおじいさんは、「くさい」とさけんで、鼻《はな》をおさえました。そうして、腹立《はらだ》ちまぎれに、いきなりくわ[#「くわ」に傍点]をふり上げて、白《しろ》のあたまから打ちおろしますと、かわいそうに、白はひと声《こえ》、「きゃん」とないたなり、死んでしまいました。
 正直《しょうじき》おじいさんとおばあさんは、あとでどんなにかなしがったでしょう。けれども死んでしまったものはしかたがありませんから、涙《なみだ》をこぼしながら、白の死骸《しがい》を引きとって、お庭のすみに穴をほって、ていねいにうずめてやって、お墓《はか》の代《かわ》りにちいさいまつの木を一本、その上にうえました。するとそのまつが、みるみるそだって行って、やがてりっぱな大木《たいぼく》になりました。
「これは白の形見《かたみ》だ」
 こうおじいさんはいって、そのまつを切って、うす[#「うす」に傍点]をこしらえました。そうして、
「白《しろ》はおもちがすきだったから」
といって、うす[#「うす」に傍点]のなかにお米を入れて、おばあさんとふたりで、
「ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ」
と、つきはじめますと、ふしぎなことには、いくらついてもついても、あとからあとから、お米がふえて、みるみるうす[#「うす」に傍点]にあふれて、そとにこぼれ出して、やがて、台所《だいどころ》いっぱいお米になってしまいました。


      三

 するとこんども、おとなりの欲《よく》ばりおじいさんとおばあさんがそれを知ってうらやましがって、またずうずうしくうす[#「うす」に傍点]をかりにきました。人のいいおじいさんとおばあさんは、こんどもうっかりうす[#「うす」に傍点]をかしてやりました。
 うす[#「うす」に傍点]をかりるとさっそく、欲ばりおじいさんは、うす[#「うす」に傍点]のなかにお米を入れて、おばあさんをあいてに、
「ぺんたらこっこ、ぺんたらこっこ」
と、つきはじめましたが、どうしてお米がわき出すどころか、こんどもぷんといやなにおいがして、なかから
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