けんだ。
わたしに勇気《ゆうき》があれば、マチアに向かって、わたしがひじょうに大きな希望《きぼう》を持っていることを打ち明けたかもしれない。けれどわたしは自分の心を自分自身にすら細かく解剖《かいぼう》することができなかった。わたしたちはもういちいち立ち止まって人に聞く必要《ひつよう》はなかった。白鳥号がわたしたちの先に立って進んで行く。わたしたちはただセーヌ川について行けばいいのだ。わたしたちは道みちリーズのいる近所を通りかけていた。わたしはかの女がその家のそばの岸を船の通るとき、見ていなかったろうかと疑《うたが》った。
夜になっても、わたしたちはけっしてつかれたとは言わなかった。そしてあくる朝は早くから出かける仕度をしていた。
「ぼくを起こしてくれたまえ」とねむることの好《す》きなマチアは言った。
それでわたしが起こすと、かれはすぐにとび起きた。
倹約《けんやく》するためにわたしたちは荒物屋《あらものや》で買ったゆで卵《たまご》と、パンを食べた。でもマチアはうまいものはたいへん好《この》んでいた。
「どうかミリガン夫人《ふじん》が、そのタルトをうまくこしらえる料理番《りょうり
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