にれの木のかげに」
「一人ですか」
「いいえ、近所のひつじ飼《か》いといっしょに」
「そらひつじやおりや犬やひつじ飼いのことを考えてごらんなさい。それができれば、このお話の初《はじ》めのほうは暗唱《あんしょう》ができるでしょう」
「ええ」
「やってごらんなさい」
「多くのひつじは安全なおりの中におりましたから、犬はみなねむっていました。ひつじ飼いも大きなにれの木のかげに、近所のひつじ飼いたちとふえをふいて遊んでいました。――覚《おぼ》えていた、覚《おぼ》えていた、まちがいはなかった」
 アーサは両手を打ってさけんだ。
「あともそういうふうにして覚えたらどうです」
「そうだな、きみといっしょにやればきっと覚えられる。ああ、お母さまがどんなに喜《よろこ》ぶだろう」
 アーサはやがてお話|残《のこ》らずを心の目にうかべるようになった。わたしはできるだけ一々の細かい話を説明《せつめい》した。かれがすっかり興味《きょうみ》を持ってきたときに、わたしたちはいっしょに文句《もんく》をさらった。そして十五分あとでは、かれはすっかり卒業《そつぎょう》いていた。
 やがて母親は出て来たが、わたしたちがいっ
前へ 次へ
全320ページ中198ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
楠山 正雄 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング