にん》の女にその汁《しる》を吸《す》わせました。すると女はやっと元気《げんき》がついて、
「まあ、わたしはどうしたというのでしょう。」
といいながら、そこらを見回《みまわ》しました。みんなは水《みず》がなくって困《こま》っていたところへ、往来《おうらい》の男がみかんをくれたので助《たす》かったことを話《はな》しますと、女はよろこんで、
「もしこの人がいなかったら、わたしはこの野原《のはら》の上で死《し》んでしまうところでしたね。」
といって、真《ま》っ白《しろ》な上等《じょうとう》な布《ぬの》を三反《さんたん》出《だ》して、
「どんなお礼《れい》でもして上《あ》げたいところだけれど、途中《とちゅう》でどうすることもできないから、ほんのおしるしにさし上《あ》げます。」
といって、渡《わた》しました。
若者《わかもの》はそれをもらって、
「おやおや、みかん三つが布《ぬの》三|反《たん》になった。」
と、ほくほくしながら布《ぬの》を小《こ》わきにかかえて、また歩《ある》いて行きました。
四
その明《あ》くる日《ひ》、若者《わかもの》はまた昨日《きのう》のようにあても
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