《ぼう》さんたちはそこで相談《そうだん》して、
「困《こま》ったものだな。うっちゃっておくわけにもいかない。仮《かり》にも観音《かんのん》さまにお願《ねが》い申《もう》しているというのだから、せめて食《た》べ物《もの》だけはやることにしよう。」
 といって、みんなで代《か》わる代《が》わる、食《た》べ物《もの》を持《も》って行ってやりました。若者《わかもの》はそれをもらって食《た》べながら、とうとう三七二十一|日《にち》の間《あいだ》、同《おな》じ所《ところ》につっ伏《ぷ》したまま、一生懸命《いっしょうけんめい》お祈《いの》りをしていました。
 いよいよ二十一|日《にち》のおこもりをすませた明《あ》け方《がた》に、若者《わかもの》はうとうとしながら、夢《ゆめ》を見《み》ました。それは観音《かんのん》さまのまつられているお帳《とばり》の中から、一人《ひとり》のおじいさんが出《で》てきて、
「お前《まえ》がこの世《よ》で運《うん》の悪《わる》いのは、みんな前《まえ》の世《よ》で悪《わる》いことをしたむくいなのだ。それを思《おも》わないで、観音《かんのん》さまにぐちをいうのは間違《まちが》っ
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