かんのん》さまの前《まえ》につっ伏《ぷ》しました。それなり幾日《いくにち》たっても動《うご》こうとはしませんでした。
するとお寺《てら》の坊《ぼう》さんがそれを見《み》て、
「あの若者《わかもの》は毎日《まいにち》つっ伏《ぷ》したきり、物《もの》も食《た》べずにいる様子《ようす》だが、あのまま置《お》いてかつえ死《じ》にに死《し》なれでもしたら、お寺《てら》の汚《けが》れになる。」
とぶつぶつ口小言《くちこごと》をいいながら、そばへ寄《よ》って来《き》て、
「お前《まえ》はだれに使《つか》われている者《もの》だ。いったいどこで物《もの》を食《た》べるのか。」
と聞《き》きました。若者《わかもの》はとろんとした目《め》を少《すこ》しあけて、
「どうしまして、わたしのような運《うん》の悪《わる》い者《もの》は使《つか》ってくれる人もありません。ごらんのとおり、もう幾日《いくにち》も何《なに》も食《た》べません。せめて観音《かんのん》さまにおすがり申《もう》して、生《い》きるとも死《し》ぬとも、この体《からだ》をどうにでもして頂《いただ》こうと思《おも》うのです。」
といいました。坊
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