その家《いえ》に住《す》みました。たった一人《ひとり》の暮《く》らしですから、当分《とうぶん》はもらったお米《こめ》で、不自由《ふじゆう》なく暮《く》らしていきました。
 そのうちに人《ひと》を使《つか》って田《た》を作《つく》らせて、三|町《ちょう》の田《た》の半分《はんぶん》を自分《じぶん》の食料《しょくりょう》に、あとの半分《はんぶん》を人に貸《か》して、だんだんこの土地《とち》に落《お》ち着《つ》くようになりました。
 秋《あき》になって刈《か》り入《い》れをするころになると、人に貸《か》した方《ほう》の田《た》はあたり前《まえ》の出来《でき》でしたが、自分《じぶん》の分《ぶん》に作《つく》った方《ほう》の田《た》は大《たい》そうよくみのりました。それからというものは、風《かぜ》でちりを吹《ふ》きためるように、どんどんお金《かね》がたまって、とうとう大金持《おおがねも》ちになりました。家《いえ》をあずけて行《い》った人《ひと》も、そのまま幾年《いくねん》たっても帰《かえ》って来《き》ませんでしたから、家《いえ》もとうとう自分《じぶん》のものになりました。
 そのうちに、若者《わ
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