だ》すから、ゆずってくれないかと、ずいぶんうるさく申《もう》し込《こ》んできたものですが、殿《との》さまが惜《お》しがって、手放《てばな》そうともなさらなかったのです。それがひょんなことで死《し》んでしまって、元《もと》も子《こ》もありません。まあ、皮《かわ》でもはいで、わたしがもらって、売《う》ろうかと思うのですが、旅《たび》の途中《とちゅう》ではそれもできないし、そうかといってこのまま往来《おうらい》に捨《す》てておくこともできないので、どうしたものか、困《こま》っているところです。」
といいました。若者《わかもの》は、
「それはお気《き》の毒《どく》ですね。では馬《うま》はわたしが引《ひ》き受《う》けて、何《なん》とか始末《しまつ》して上《あ》げますから、わたしにゆずって下《くだ》さいませんか。その代《か》わりにこれを上《あ》げましょう。」
といって、白《しろ》い布《ぬの》を一|反《たん》出《だ》しました。下男《げなん》は死《し》んだ馬《うま》が布《ぬの》一|反《たん》になれば、とんだもうけものだと思《おも》って、さっそく馬《うま》と取《と》りかえっこをしました。その上、「も
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