りました。ふたりは、また、とぼとぼあるきだしました。けれど、行くほど森は、ふかくばかりなって来て、ここらでたれか助けに来てくれなかったら、ふたりはこれなりよわりきって、倒《たお》れるほかないところでした。
 すると、ちょうどおひるごろでした。雪のように白いきれいな鳥が、一本の木の枝にとまって、とてもいい声でうたっていました。あまりいい声なので、ふたりはつい立ちどまって、うっとり聞いていました。そのうち、歌をやめて小鳥は羽ばたきをすると、ふたりの行くほうへ、とび立って行きました。ふたりもその鳥の行くほうへついて行きました。すると、かわいいこやの前に出ました。そのこやの屋根に、小鳥はとまりました。ふたりがこやのすぐそばまで行ってみますと、まあこのかわいいこやは、パンでできていて、屋根はお菓子《かし》でふいてありました。おまけに、窓はぴかぴかするお砂糖《さとう》でした。
「さあ、ぼくたち、あすこにむかって行こう。」と、ヘンゼルがいいました。「けっこうなおひるだ。かまわない、たんとごちそうになろうよ。ぼくは、屋根をひとかけかじるよ。グレーテル、おまえは窓のをたべるといいや。ありゃあ、あまいよ。
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