なにしろ、かんじん、やしなってやっているおれたちふたりの、くうものがないしまつだ。」
「だから、おまえさん、いっそこうしようじゃないか」と、おかみさんがこたえました。
「あしたの朝、のっけに、こどもたちをつれだして、森のおくのおくの、木《こ》ぶかい所まで行くのだよ。そこで、たき火をしてやって、めいめいひとかけずつパンをあてがっておいて、それなりわたしたち、しごとのほうへすっぽぬけて行って、ふたりはそっくり森の中においてくるのさ。こどもらにかえり道が見つかりっこないから、それでやっかいがぬけようじゃないか。」
「そりゃあ、おめえ、いけねえよ。」と、木こりがいいました。
「そんなこたあ、おれにはできねえよ。こどもらを森ん中へおきざりにするなんて、どうしたって、そんなかんがえになれるものかな。そんなことしたら、こどもら、すぐと森のけだものがでてきて、ずたずたにひっつぁいてしまうにきまってらあな。」
「やれやれ、おまえさん、いいばかだよ。」と、おかみさんはいいました。「そんなことをいっていたら、わたしたち四人が四人、かつえ死にに死んでしまって、あとは棺桶《かんおけ》の板をけずってもらうだけが、
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