ました。うつくしい花のさいている草原もありました。水晶《すいしょう》のようにきれいな水のながれている川もありました。こんなたかい空の上に、こんなきれいな国があろうとは、おもってもいませんでしたから、ジャックはあっけにとられて、ただきょとんとしていました。
 いつもまにか、ふと、赤い角《かく》ずきんをかぶった、みょうな顔のおばあさんが、どこから出て来たか、ふと目の前にあらわれました。ジャックは、ふしぎそうに、このみょうな顔をしたおばあさんをみつめました。おばあさんは、でも、やさしい声でいいました。
「そんなにびっくりしないでもいいのだよ。わたしはいったい、お前さんたち一家《いっか》のものを守ってあげている妖女《ようじょ》なのだけれど、この五、六年のあいだというものは、わるい魔《ま》もののために、魔法《まほう》でしばられていて、お前さんたちをたすけてあげることができなかったのさ。だが、こんどやっと魔法がとけたから、これからはおもいのままに、助《たす》けてあげられるだろうよ。」
 だしぬけに、こんなことをいわれて、ジャックは、なおさらあっけにとられてしまいました。そのぽかんとした顔を、妖女は
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