いうばかなことをしてくれたのだね。ほんとにあきれてしまう。こんなつまらない、えんどう豆の袋なんかにつられて、だいじな牝牛一ぴき、もとも子もなくしてしまうなんて、神さま、まあ、このばかな子をどうしましょう。」
 母親はぷんぷんおこって、いまいましそうに、窓のそとへ、袋の中の豆をのこらず、なげすててしまいました。そして、つくづくなさけなさそうに、しくんしくん、泣きだしました。
 きっとよろこんでもらえるとおもっていると、あべこべに、うまれてはじめて、おかあさんのこんなにおこった顔をみたので、ジャックはびっくりして、じぶんもかなしくなりました。そして、なんにもたべるものがないので、おなかのすいたまま、その晩ははやくから、ころんとねてしまいました。
 そのあくる朝、ジャックは目をさまして、もう夜があけたのに、なんだかくらいなとおもって、ふと窓のそとをみました。するとどうでしょう、きのう庭になげすてた豆の種子《たね》から、芽が生えて、ひと晩のうちに、ふとい、じょうぶそうな豆の大木が、みあげるほどたかくのびて、それこそ庭いっぱい、うっそうとしげっているではありませんか。
 びっくりしてとびおきて、
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