たったか、かんがえもつくまいよ。」といって、うちを出てからの話を、ひととおりしてきかせました。
 そうきくと、ふたりの姉は、大ごえあげて、わあわあ泣きわめきながら、ラ・ベルが、つまらない、ものねだりをして、だいじな父親のいのちとかけがえにしたといって、せめました。なぜきものか、ゆびわにしなかったか、ばかな子だといってののしりました。けれど、ラ・ベルは、じぶんがしでかしたあやまちのために、涙一てきながしませんでした。それよりか、自分ひとりをなげだして、父親のいのちに代るかくごを、はっきりきめていたのでございます。
 妹のけっしんをきくと、こんどは、男のきょうだいたちが、いっせいにさけび立てました。
「いけない、いけない。そんなことをさせるくらいなら、われわれが行って、その怪獣と、むこうを倒《たお》すか、こちらが倒されるか、しょうぶをつけてやる。」
 けれど、商人は、むすこたちをおさえて、それは、あいてがどんなにおそろしいけだものだか知らないからだ。それに手むかいをしても、どうせむだにきまっている。それよりか、きょうだいたちおたがいにたすけ合って、こののちながくしあわせにくらしてもらいたい
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