一《にほんいち》のお婿《むこ》さんをもらわなければならない。」
と言《い》いました。
そこでこの世《よ》の中でだれがいちばんえらいかというと、それは高《たか》い高《たか》い空《そら》の上から世界中《せかいじゅう》をあかるく照《て》らしておいでになるお日さまの外《ほか》にはありませんでした。そこでおとうさんはおかあさんと娘《むすめ》を連《つ》れて、天《てん》へ上《のぼ》っていきました。そしてお日さまに、
「お日さま、お日さま、あなたは世《よ》の中でいちばんえらいお方《かた》です。どうぞわたくしの娘《むすめ》をお嫁《よめ》にもらって下《くだ》さいまし。」
といって、ていねいにおじぎをしました。
するとお日さまはにこにこなさりながら、
「それはありがたいが、世《よ》の中にはわたしよりもっとえらいものがあるよ。」
とおっしゃいました。
おとうさんはびっくりしました。
「まあ、あなたよりもえらい方《かた》があるのですか。それはどなたでございますか。」
「それは雲《くも》さ。わたしがいくら空《そら》でかんかん照《て》っていようと思《おも》っても、雲《くも》が出てくるともうだめになるのだ
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