を、せっせとくら[#「くら」に傍点]につけていました。
 するうち、ふとあたまの上で、
「おとうさん、おとうさん、そのお米はわたいが持って行くよ」
と、いう声がしました。
 ふしぎにおもって、おとうさんがあおむいて見ると、軒《のき》さきの高いたなの上にのせられて、たにしの子が日向《ひなた》ぼっこしていました。
 たにしの子が口をきくはずがない、なにかの空耳《そらみみ》だろうとおもって、かまわずしごとをしていますと、また耳のはたで、
「おとうさん、おとうさん。わたいが持ってくってば」
とよぶ声がしました。口をきいたのは、やはりつぶ[#「つぶ」に傍点]の子だったのです。
「おとうさん、わたいはちいさいから馬をひいて行くことはできないけれど、米俵《こめだわら》の上にわたいをのせてくれれば地主《じぬし》さまのお屋敷《やしき》まで馬をつれてってきてあげるよ」
 たにしの子がずんずんそういって口をきくと、おとうさんも、おかあさんも、ほんとうにびっくりしてしまいました。でも、この子はなにしろ水神《すいじん》さまのお申《もう》し子《ご》だから、きっとかわったことができるのかもしれないとおもって、そうい
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