さそわれて、
からすのくちにつつかれな、
犬の足にふまれるな」
といいながら、田から田へとさがしてまわりました。どこへ行ってもたにしは数《かず》しれずうじゃうじゃころがっていますが、それがあんまりおおすぎて、どれがおむこさんのたにしなのか、かいもく、わけがわからなくなってしまいました。
およめさんは、それでもあきらめきれないので、あいかわらず、
「つぶ、つぶ、お里へまいらぬか。
つぶ、つぶ、むこどの、どこへ行《い》た」
といいいい、さがしてまわるうちに、春の日はいつか暮《く》れて、もう田んぼのなかはよく見えないのに、からだはどろまみれになってしまいました。すっかりくたびれて、がっかりしきって、泣き顔になって、およめさんは、深い深いどろ田のなかに、いまにもずるずる引きこまれそうになったとき、
「これ、これ、こんな所《ところ》で、いつまでもなにをしているのだね」
といいながら、いつどこからあらわれたか、光るようなうつくしいわかものが、涙《なみだ》でかすんでいるおよめさんの目の前に、にっこりわらって立っていました。
水神《すいじん》さまの申《もう》し子《ご》でありな
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