たにしの出世
楠山正雄
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)屋敷《やしき》
|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)長者|屋敷《やしき》
[#]:入力者注。傍点の位置を示す
(例)ふるいすき[#「すき」に傍点]
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一
むかしあるところに、田を持って、畑を持って、屋敷《やしき》を持って、倉《くら》を持って、なにひとつ足りないというもののない、たいへんお金持ちのお百姓《ひゃくしょう》がありました。それで村いちばんの長者《ちょうじゃ》とよばれて、みんなからうらやましがられていました。
この長者とおなじ村に、これはまた持っているものといっては、ふるいすき[#「すき」に傍点]とくわ[#「くわ」に傍点]とかま[#「かま」に傍点]がいっちょうずつあるばかりという、たいへん貧乏《びんぼう》なお百姓の夫婦《ふうふ》がありました。長者の田を借《か》りて、お米やひえ[#「ひえ」に傍点]をつくって、その日その日のかすかなくらしを立てていました。
夫婦はだんだん年をとって、毎日はたらくのが苦しくなりました。それでもじぶんたちの跡《あと》
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