行くと猿《さる》は、
「くらげさん、くらげさん。まだ竜宮《りゅうぐう》までは遠《とお》いのかい。」
「ええ、まだなかなかありますよ。」
「ずいぶんたいくつするなあ。」
「まあ、おとなしくして、しっかりつかまっておいでなさい。あばれると海《うみ》の中へ落《お》ちますよ。」
「こわいなあ。しっかり頼《たの》むよ。」
こんなことを言《い》っておしゃべりをしていくうちに、くらげはいったいあまり利口《りこう》でもないくせにおしゃべりなおさかなでしたから、ついだまっていられなくなって、
「ねえ、猿《さる》さん、猿《さる》さん、お前《まえ》さんは生《い》き肝《ぎも》というものを持《も》っておいでですか。」
と聞《き》きました。
猿《さる》はだしぬけにへんなことを聞《き》くと思《おも》いながら、
「そりゃあ持《も》っていないこともないが、それを聞《き》いていったいどうするつもりだ。」
「だってその生《い》き肝《ぎも》がいちばんかんじんな用事《ようじ》なのだから。」
「何《なに》がかんじんだと。」
「なあにこちらの話《はなし》ですよ。」
猿《さる》はだんだん心配《しんぱい》になって、しきりに聞《
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