っぽを出《だ》して、裏口《うらぐち》からついと逃《に》げていきました。
おじいさんはびっくりして、がっかり腰《こし》をぬかしてしまいました。そして流《なが》しの下のおばあさんの骨《ほね》をかかえて、おいおい泣《な》いていました。
すると、
「おじいさん、おじいさん、どうしたのです。」
と言《い》って、これも裏《うら》の山にいる白《しろ》うさぎが入《はい》って来《き》ました。
「ああ、うさぎさんか。よく来《き》ておくれだ。まあ聞《き》いておくれ。ひどい目にあったよ。」
とおじいさんは言《い》って、これこれこういうわけだとすっかり話《はなし》をしました。うさぎはたいそう気《き》の毒《どく》がって、
「まあ、それはとんだことでしたね。けれどかたきはわたしがきっととって上《あ》げますから、安心《あんしん》していらっしゃい。」
とたのもしそうに言《い》いました。おじいさんはうれし涙《なみだ》をこぼしながら、
「ああ、どうか頼《たの》みますよ。ほんとうにわたしはくやしくってたまらない。」
と言《い》いました。
「大丈夫《だいじょうぶ》。あしたはさっそくたぬきを誘《さそ》い出《だ》して、ひどい目に合《あ》わしてやります。しばらく待《ま》っていらっしゃい。」
とうさぎは言《い》って、帰《かえ》っていきました。
二
さてたぬきはおじいさんのうちを逃《に》げ出《だ》してから、何《なん》だかこわいものですから、どこへも出ずに穴《あな》にばかり引《ひ》っ込《こ》んでいました。
するとある日、うさぎはかまを腰《こし》にさして、わざとたぬきのかくれている穴《あな》のそばへ行《い》って、かまを出《だ》してしきりにしばを刈《か》っていました。そしてしばを刈《か》りながら、袋《ふくろ》へ入《い》れて持《も》って来《き》たかち栗《ぐり》を出《だ》して、ばりばり食《た》べました。するとたぬきはその音《おと》を聞《き》きつけて、穴《あな》の中からのそのそはい出《だ》してきました。
「うさぎさん、うさぎさん。何《なに》をうまそうに食《た》べているのだね。」
「栗《くり》の実《み》さ。」
「少《すこ》しわたしにくれないか。」
「上《あ》げるから、このしばを半分《はんぶん》向《む》こうの山までしょっていっておくれ。」
たぬきは栗《くり》がほしいものですから、しかたなしにしばを背負《せお》って、先《さき》に立《た》って歩《ある》き出《だ》しました。向《む》こうの山まで行くと、たぬきはふり返《かえ》って、
「うさぎさん、うさぎさん。かち栗《ぐり》をくれないか。」
「ああ、上《あ》げるよ、もう一つ向《む》こうの山まで行ったら。」
しかたがないので、またたぬきはずんずん先《さき》に立《た》って歩《ある》いていきました。やがてもう一つ向《む》こうの山まで行くと、たぬきはふり返《かえ》って、
「うさぎさん、うさぎさん。かち栗《ぐり》をくれないか。」
「ああ、上《あ》げるけれど、ついでにもう一つ向《む》こうの山まで行っておくれ。こんどはきっと上《あ》げるから。」
しかたがないので、たぬきはまた先《さき》に立《た》って、こんどは何《なん》でも早《はや》く向《む》こうの山まで行きつこうと思《おも》って、うしろもふり向《む》かずにせっせと歩《ある》いていきました。うさぎはそのひまに、ふところから火打《ひう》ち石《いし》を出《だ》して、「かちかち。」と火をきりました。たぬきはへんに思《おも》って、
「うさぎさん、うさぎさん、かちかちいうのは何《なん》だろう。」
「この山はかちかち山だからさ。」
「ああ、そうか。」
と言《い》って、たぬきはまた歩《ある》き出《だ》しました。そのうちにうさぎのつけた火が、たぬきの背中《せなか》のしばにうつって、ぼうぼう燃《も》え出《だ》しました。たぬきはまたへんに思《おも》って、
「うさぎさん、うさぎさん、ぼうぼういうのは何《なん》だろう。」
「向《む》こうの山はぼうぼう山だからさ。」
「ああ、そうか。」
とたぬきが言《い》ううちに、もう火はずんずん背中《せなか》に燃《も》えひろがってしまいました。たぬきは、
「あつい、あつい、助《たす》けてくれ。」
とさけびながら、夢中《むちゅう》でかけ出《だ》しますと、山風《やまかぜ》がうしろからどっと吹《ふ》きつけて、よけい火が大きくなりました。たぬきはひいひい泣《な》き声《ごえ》を上《あ》げて、苦《くる》しがって、ころげまわって、やっとのことで燃《も》えるしばをふり落《お》として、穴《あな》の中にかけ込《こ》みました。うさぎはわざと大きな声《こえ》で、
「やあ、たいへん。火事《かじ》だ。火事《かじ》だ。」
と言《い》いながら帰《かえ》っていきました。
三
そのあ
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