の戸口に立って、とんとん、戸をたたいて、こういいました。
「さあこどもたちや、あけておくれ、おかあさんがかえって来たのだよ、おまえたちめいめいに、森でいいものをみつけて来たのだよ。」
子やぎたちは、声をそろえて、
「さきに足をおみせ、うちのおかあさんだかどうだか、みてやるから。」
そういわれて、おおかみは、前足を窓にのせました。こどもやぎがそれを見ますと、白かったので、おおかみのいうことを、すっかりほんとうにして、戸をあけました。
ところで、はいって来たのはたれでしたろう、おおかみだったではありませんか。
みんな、わあっとおどろいて、ふるえあがって、てんでんにかくれ場所をさがして、かくれようとしました。ひとりは、つくえの下にとびこみました。次は寝床《ねどこ》にはいこみました。三ばんめは、炉《ろ》の中にかくれました。四ばんめは、台所《だいどころ》へにげました。五ばんめは、棚《たな》にあがりました。六ばんめは、洗面《せんめん》だらいの下にもぐりました。七ばんめは、柱時計の箱のなかにかくれました。
ところが、おおかみは、そばからみつけだして、ぞうさなく、ひとりひとり、かたはしからつ
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