咲き乱れ、そして馥郁としたメロンの香の中に、長々と天井の支柱からぶら下って首を吊った森源の死体に、イキナリ突当った。
 と同時に、私は、慄《ぞ》っとして一目散に、その温室を飛出してしまったのだ。
      ×
 私が、悪夢に憑かれたように、よろめき帰ったその夜、どうした原因か、森源の温室から出た火は、またたく間に、その全建物を、炎上させてしまった。若しや狼狽のあまり、私が取り落したタバコの火からではなかろうか――。そう思うと、今なお自責の念に襲われるのだ。



底本:「怪奇探偵小説名作選7 蘭郁二郎集 魔像」ちくま文庫、筑摩書房
   2003(平成5)年6月10日第1刷発行
初出:「科学ペン」
   1938(昭和13)年9月号
※「人造恋愛」を改題。
入力:門田裕志
校正:川山隆
2006年11月13日作成
青空文庫作成ファイル:
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