、なまじ、予備知識を与えられていただけに、それに前いったような退屈さからの好奇心も手伝って、
「ほう、すばらしいものですね、これなら輸入ものに負けませんね」
 といったものである。ところが、森源は、白い眼をあげて私を一瞥すると、
「ふん、輸入ものがいいと思ってるなア素人さ」
 そう、ぺっとはきすてるようにいうと、知らん顔をして仕事の手を続けていた。
「ふーん、輸入ものは駄目かね」
「そうさ、当り前じゃねえか、このマスクメロンてものはな、時期が大切なんだ、蔓を切って船へ積んで、のこのこと海を渡ってくるようじゃほんとの味は時期外れさ」
 やっとこちらを向きなおった森源は、はじめて見馴れぬ私の姿に気づいたように、手を休めた。
「なるほど、そういえばそうに違いない――、このメロンは年に何回位採れるんかね、一体」
「他じゃ順ぐり順ぐりにやってもいいとこ三回だろう、俺んとこじゃ、まずその倍だよ……」
「倍って、六回も採れるかね」
「そうさ、もっと採れるようになる筈だ」
「ほほお、何かそういう方法があるんかね」
「他の奴等みたいに、ただ温室は暖めればいいと思っているんじゃせいぜい三回が関の山さ。それ
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