達が出来て、大変光栄です」
少しキザないい方だけれど、どうやら有頂天になっていた私には、寧ろ、それが実感であったのだ。私は、今日はそばにルミがいるので、三人|鼎座《ていざ》のまま、すっかり腰を落着けてしまった。
その中に、いつとはなく気づき、訝かしく思われて来たのは、外でもないルミのことだった。
というのは、彼女は、実に美しい少女であったし、又その話しっぷりから、高等な教育を受けたらしいことも、よくわかっているのだが、時に、ふっと黙った時の横顔は、まるで彫刻のようにひえびえとする冷めたい、固い表情を見せるのだ。そして、瞬きを忘れていることが屡々ある――。
私はそんな時に、一寸森源を偸見た。すると、森源も、疲れたような、ゆるんだ顔をして、ぼんやり天井を見詰めているのだ。
(私が、図に乗って、あんまり長居をしたせいであろうか)
「やあ、どうも大変お邪魔しまして……、又伺わせてもらいます――」
「えっ――」
あまり突然だったので、びっくりしたように眼をあげた森源は、何か口の端まで出かかった言葉を、もぐもぐと呑込んでしまうと、
「そうですか、では、ぜひ来て下さい」
そういってルミに
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