。――所謂常識とやらを外《はず》れたことだからね」
「……しかし、なるほど動物も植物ももとは一緒だとしても、そんなに早く、人間にまで進化さすことが出来ますか」
「適当な方法を使えば雪の降る日に西瓜を実らすことも出来る。わしはそのあらゆる方法を使って、この地に発見された珍らしい活溌な寄生木《やどりぎ》の一種をもとに、あれまで漕ぎつけたのだ。寄生木はほとんど根らしいものを持たぬあれは菜食植物だ」
「…………」
「ところが、寄生木から出来たものは、御覧の通り人間でいう女性ばかりだったよ」
 吉見は、その言葉で何か皮肉な諷刺をいったつもりらしく、川島の顔を窺うようにして片頬を歪めたけれど、しかし川島はさっきから息つく暇もないものに襲われていた。
(果して、そんなことがあり得るだろうか)
 どうしてもその疑問を振切ることが出来なかった。そのくせ一方では
(美しい筈だ。花のような美少女ではなくて、花そのものの美少女なのだ――、似ている筈だ。同じ枝に咲いた桜そのもののように見分けがつかないのだ)
 とも、思うのである。

      六

「しかし、いずれにもせよ」
 吉見が、不満そうな眼をあげたけ
前へ 次へ
全28ページ中22ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
蘭 郁二郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング