。――所謂常識とやらを外《はず》れたことだからね」
「……しかし、なるほど動物も植物ももとは一緒だとしても、そんなに早く、人間にまで進化さすことが出来ますか」
「適当な方法を使えば雪の降る日に西瓜を実らすことも出来る。わしはそのあらゆる方法を使って、この地に発見された珍らしい活溌な寄生木《やどりぎ》の一種をもとに、あれまで漕ぎつけたのだ。寄生木はほとんど根らしいものを持たぬあれは菜食植物だ」
「…………」
「ところが、寄生木から出来たものは、御覧の通り人間でいう女性ばかりだったよ」
吉見は、その言葉で何か皮肉な諷刺をいったつもりらしく、川島の顔を窺うようにして片頬を歪めたけれど、しかし川島はさっきから息つく暇もないものに襲われていた。
(果して、そんなことがあり得るだろうか)
どうしてもその疑問を振切ることが出来なかった。そのくせ一方では
(美しい筈だ。花のような美少女ではなくて、花そのものの美少女なのだ――、似ている筈だ。同じ枝に咲いた桜そのもののように見分けがつかないのだ)
とも、思うのである。
六
「しかし、いずれにもせよ」
吉見が、不満そうな眼をあげたけ
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