幻聴
蘭郁二郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)運命《ほし》
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ああ皆様、なんという私は、この呪われた運命《ほし》の下に生れなければならなかったのでございましょう。――思っても嫌な嫌な、バタバタと足をふみならし、歯ぎしりをしてのたうちたいような、居ても立ってもいられない、焦燥の真ッただなかにほーりこまれてしまったのでございます。
――こんな愚痴を申し上げてよいものか?……さァ、一寸、ためらうのでございますけれども……。
皆様、「千里眼」というものを御存じでしょうか――、アア、そうお笑い下さいますな、イカにも突ッ拍子もない事を申し上げたようですけど――だが、それはまだこの言葉の持つ恐ろしい意味をご存じない、幸福な方だからでございます。
でも、皆様だって、その端《はし》ッこ位は経験されていられると思うのですが、例えば音がしないのに、確かにしたと感じられた事はございませんか、お友達と一緒に歩かれた時に、ふと呼びかけられたように思って、『何《なに》、何んだって?』と訊きかえして笑われたり――まったく、そんなことは笑ってすまされることなのですが……
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