彼等は幸いにして今日まで太陽系という原子から、地球という電子を叩き出すことに成功はしておりません、しかし一点(ほんの一点)先きに、僕はこのサイクロトロンの中の実験材料から電子を叩き出すことに成功しております、僕の爆撃によって叩き出された電子の上にあったであろうあらゆる生命、思想、文明は、粉砕し去られたはずです、この成功は、間もなく超大巨人の実験室に於いても成功するでしょう、そして原子爆撃、僕たちにとっては宇宙爆撃が工業的にまで行われるようになるかも知れません。――しかもこの恐るべき宇宙爆撃は絶対に阻止するすべ[#「すべ」に傍点]が無いのです、それは、現在この僕の実験室にある実験材料の物質の、その中の原子の中の電子というものから、いかに阻止の歎願が叫ばれたとしても、それを知り得るすべ[#「すべ」に傍点]がないからと同じです。地球人は、この刻々に迫っている宇宙爆撃の破滅も知らずに、笑い、怒り、歌っているのです、僕は、何か総毛立つような恐怖を感ぜずにはいられません。
 しかし超大巨人の宇宙爆撃によって、この地球がむざむざと宇宙の外に叩き出され、むなしく崩壊することは、とても坐視するに忍び
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