いる「人間」は、いま高速プロトンの爆撃によって原子の(原子の中の電子に住む人間のいる原子の)変換に成功したといって、科学の勝利を謳歌しているかも知れません、しかし、なんぞ計らん、彼等の住む地球である電子が、この、磁気学研究所ボルネオ支所の村尾健治によって爆撃を喰《くら》い、彼らが永劫に安泰と信じていた球体は、原子系の中から叩き出されようとしているのです……。彼等は、そんなこととは夢にも知らず、研究し、生活し、恋愛し、闘争し、飽食し、そして又科学は吾等の手にあると誇示しているかも知れないのです、しかしながら、僕たちにとってはそのようなことはどうでもいいことです、意に介さぬことであります、水銀の八十個の惑星から一個を叩き出してしまえば、七十九個の惑星を持った金《きん》というものが得られるのです、叩き出した一個の惑星が何処に行こうとも、又その惑星の上に生活している生物がいようとも、そんなことは知ったことでないし、又現在は知るすべ[#「すべ」に傍点]もありません。
けれどもこれは僕たちの実験室の中にある実験材料の中の原子の話、しかしこれと同様なことが、この、現に僕たちが生活している太陽系の地
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