いかも知れません、ほんとうにどんどん感得出来て、「スイッチの切れないラジオ」のように四六時中頭の中に他人の意志が響いて来ていたんでは、僕は気が狂ってしまうかも知れませんから。呵々《かか》。五月二十八日附――。

       六

 木曾礼二郎から石井みち子あて私信。
 ――過日はお手紙ありがとう、早速に返事を書くつもりだったのに、急に所員が減ってしまったことや何かで、多忙にまぎれてしまっていました。しかしこの前のお手紙で元気らしいので安心していたのもその一の原因です。きょう村尾君からも手紙をもらいました、村尾君もなかなかに元気の様子、ボルネオに比べれば内地の方が気候が悪いといったような気焔を上げていましたよ、皆んな揃って元気なのは何よりです、ことに石井さんは昨今非常に朗らかだということですね、そんなにいいことがあったら知らせて下さい。僕も出張ということでそっちへ行って見たいと思っていましたが、矢張り手不足などでどうやら急には行けそうもなくなりました、鬼が笑うかも知れませんが今年の末か、来年には皆さんの元気な、ボルネオ焼けの顔が見られると思います。内地の冬に、避寒がてら行ければ嬉しいと
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