けて来た……。
       ×
 私のアタマの中には、昼間みた※[#「蠢」の「春」に代えて「亡」、第3水準1−91−58]と、その丘子の内股に彫られたという蛾が、どっちともつかず入り混って、トテツもなく巨大な姿となったり、或は針の先きほどの点になったり、わんわん、わんわんと囁き廻っていた。そして生暖かい泥沼のような眠りの中に、白いタンカに乗ったマダム丘子の死骸が、死体室に運ばれて行ったのを、どうしたことかアリアリと覚えていた。
[#地付き](「探偵文学」昭和十一年七月号)



底本:「火星の魔術師」国書刊行会
   1993(平成5)年7月20日初版第1刷発行
底本の親本:「夢鬼」古今荘
   1936(昭和11)年発行
初出:「探偵文学」
   1936(昭和11)年7月
※底本は、物を数える際や地名などに用いる「ヶ」(区点番号5−86)を、大振りにつくっています。
入力:門田裕志
校正:川山隆
2006年12月30日作成
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全8ページ中8ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
蘭 郁二郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング