木葉ちる桂の寺に宿とればわれもと帰る夕がらすかな
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耳とほくなりし頃。
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きこえねば楽しげもなし老いぬれば鶯にすら耳|疎《うと》くなる
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雪三首。
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朝晴れし雪のけしきは長閑にて松の日影にしづくこぼるる
朝日さす枝はしづくになりにけり積れどあたら松の上の雪
朝ぼらけみ山おろしの吹くすゑに一むら曇る松の雪かな
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冬月。
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さ夜千鳥なく声さゆる加茂川の白洲《しらす》の霜は月にぞありける
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一乗寺の里に住みける冬。
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焚かん木は風に折らせて山かげの冬ごもりこそ事なかりけれ
しぐれてはわが山の井ぞ濁りけるやがて夕食《ゆふけ》に汲まんと思ふを
山窓の夕日は消えて比叡おろし風先《かざさき》しろくふる時雨かな
こもりたる楢の葉柏《はがしは》ちりはてて時雨のみこそ猶たたきけ
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