実のちるおとさむし山寺の庭

世には似ずにほひめでたしわが山は紅葉も人に媚びぬなるらん

山寺の棚橋くぐるやり水も見えぬばかりに紅葉こぼるる

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旅中。
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ひとり行く影さへ細き夕づく日きゆる末より降る時雨かな

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落葉。
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蜘蛛《ささがに》の糸にかかりて黄ばみけり秋の形見の楢《なら》の一つ葉

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蝶。
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うかれきて花の木の間にぬる蝶は誰が山踏《やまぶみ》の夢路なるらん

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高野川のほとりに住みける頃。
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春の夜は隙間《すきま》がちなる宿もよし閨もる風に梅が香ぞする

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見たるままを。
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岡の辺や土とる穴の片くづれさかさまに咲くしら梅の花

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山吹。
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