な
前《さき》つ世の如何なる罪のむくいきて拙かるらん老が身のすゑ
老いて世にすてられんとは思ひきやあはれ六十路もたはぶれの夢
われこそは浦洲《うらす》の鳥のうらさびて世にもまじらず身は老いにけれ
たのみなき老のあはれを敷栲《しきたへ》の枕ぬらして泣く寝覚かな
いたづらに人かずならず老いにけり我やうき世の飯袋《めしぶくろ》なる
年老いて物忘るるは住の江に貝を拾ひしむくいなるらん
草も木も花こそうつれ常磐樹のかはらぬ世こそあらまほしけれ
老いぬれば痩せさらぼへる身を愧ぢて人住む世には出でじとぞ思ふ
六十ぢあまり過ぎしは夢のうき世にて覚めし現《うつつ》は今日ひと日のみ
老いぬれば傾く月を見るにさへ末長からぬわが身さびしも
大椋《おほくら》の池にうかるる鴛鴦《をしどり》のをしき月日をいたづらに経ぬ
あぢきなき我や潮干《しほひ》のみをつくし何のしるしか世に残るらん
我ばかりからき世嘗めし身のはては路の蓼生に骨《かばね》曝さん
身の老いし歎きにまさる憂きもがなそよ其事とまぎれもぞする
かぞふれば七十ぢ三とせ老い暮れぬさりとて世にはわざも残らず
言問はぬ木すら花咲きみ
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