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ふたもとの年の門松いはへいはへひともとは君ひともとは親

世を知らぬ老が今朝くむ水にすら若してふ名は憎《にく》からぬかな

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おなじ年の春、徳山にありて、金子正煥の六十の賀に。
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人の世の六十路は越えつ身の憂きを遁れて遊べ花鳥のうへに

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おなじ頃。
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山落つる水を田に引き牛入れて都濃《つの》の里びと苗代づくる

のどけしな野寺の鐘の音さへもほのかに霞む花の夕ぐれ

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またおなじ頃、何となく身の終りの思はれければ。
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月花にうかれつくして身の果は露のかをりに骨も清《きよ》けん

何くれと世に言挙《ことあげ》はせしかども物言はぬ身と今ぞなりなん

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この夏、雨の久しく降らねば。
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沖辺より西南風《ひかた》ふくらし南の海日にけに川の水の涸れゆく

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