南洋館
與謝野寛

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)緑《みどり》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)生々《いき/\》した
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

[#ここから改行天付き、折り返して1字下げ]
緑《みどり》の褪《さ》めた、
砂と塵挨《ごみ》だらけの、
水気《みづけ》のない、
いぢけた、倭《ひく》い椰子の木立、
木伊乃《みいら》にした、動《うご》かない天狗猿、
死《し》んだ、みすぼらしい、ちつぽけな鰐、
くすんだ、黄土《わうど》と CHOCOLAT《シヨコラア》 の色をした
廉物《やすもの》の、摸造の爪哇《ジヤワ》更紗、
まだ一度も生血《いきち》を嘗めず、
魂《たましひ》の入らぬ、
ひよろ長い毒矢《どくや》の数々《かず/″\》……
え? これが大正博覧会の南洋館?

最初の二つの室《しつ》を観て歩いて、
おれは思はずおれの子供等に言つた、
「こんなぢやない! こんなぢやない! 南洋は!」
そし
次へ
全7ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
与謝野 寛 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング