の夜の火かげあえかに人見せてとれよと云へど神に似たれば
明けむ朝われ愛着《あいぢやく》す人よ見な花よ媚ぶなと袋に縫へな
にくき人に柑子《かうじ》まゐりてぬりごめの歌問ふものか朝の春雨
よしと見るもうらやましきもわが昨日《きのふ》よそのおん世は見ねば願はじ
酔ひ寝ては鼠がはしる肩と聞き寒き夜|守《も》りぬ歌びとの妻
手《た》ぢからのよわや十歩《とあし》に鐘やみて桜ちるなり山の夜の寺
兼好を語るあたひに伽羅たかむ京の法師の麻の御《み》ころも
かくて世にけものとならで相逢ひぬ日てる星てるふたりの額《ぬか》に
春の夜や歌舞伎を知らぬ鄙びとの添ひてあゆみぬあかき灯の街
玉まろき桃の枝ふく春のかぜ海に入りては真珠《しんじゆ》生むべき
春いそぐ手毬ぬふ日と寺々《てら/″\》に御詠歌《みえいか》あぐる夜は忘れゐぬ
春の夜はものぞうつくし怨《ゑん》ずると尋《ひろ》のあなたにまろ寝の人も
駿河の山百合がうつむく朝がたち霧にてる日を野に髪すきぬ
伽藍すぎ宮をとほりて鹿《しか》吹きぬ伶人《れいじん》めきし奈良の秋かぜ
霜ばしら冬は神さへのろはれぬ日ごと折らるるしろがねの櫛
鬼が栖
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