とのびのびになり加様に御無沙汰いたせし次第何卒々々おゆるし下され度、ねがいあげ候。
 鶴江の育つをみるにつけ、菊ちゃんもさぞ大きくなられたであろうと存じますが、おかわりもありませんか。またあなた様のことは時折り夢にさえみ、あの黒髪のゆたかさなど懐しくしのんで居ります。岡村へはあのままたよりもいたしませず、余りの御無沙汰に、今日はこのあとに一本書いて出すつもりで居りますが、あね様からもおついでの時くれぐれも宜しく、伊助の写真でもありますならどんなに小さいのでもよろしいから一枚送って下さるよう、おねがい申して下さいませ。また、あれの書きました習字でもありますなら(どんな書きくずしでもよろしく)これも一枚おねがいいたします。
 いつもいつも嬉しいたよりはきこえあげず、さぞかしおうるさい事でありましょうが、父からはかえりみられず、岡村のあに様や戸部の伯父とてあの様なもの堅さではとりつく島もなく、ただただ頼りになるのはあね様のみ、嬉しいにつけ悲しいにつけ、つい、お耳にいれておすがり申したきこの心情、何卒御推察下さいますよう。
 つきましては、加様に不甲斐なきわたくしの躯故、またもまたもと良人に薬
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