の扱いようは蛇蝎をみるが如しであった。それがいつの間に心がほぐれたのか季節の見舞いは欠かさぬようになり、盆暮には心をこめた郷里の名物が送られるのである。
爺さん夫婦は養子の話が出るたびに顔を見合せて苦が笑いをする。どうも素直には話にのれぬ気がするのだ。安さんは兄さんや代書屋を貶して、あれたちは財産めあてなのだから、と暗に警戒を強いるし、兄さんの方ではまた安さんや代書屋に兎角難くせをつけたがる。それへ代書屋が内儀さんを突っついて何んとか色をつけて貰おうと焦せる。爺さん夫婦にすれば、どの親類も下心があって近づいてくるように思われるので、どの親類をも易々と信用することが出来ない。それに爺さんには、自分の不遇時代にとった親類のいかにも冷淡なあしらいようが心にこたえているので、今更お義理にも親類のためを思うなどいう気もちにはなれないのだ。それどころか、親類のものたちがつめ寄れば寄る程、爺さんの心は金をしっかと抱いて孤独の穴倉へとのがれていく。ここまで貯めるには若い時から並大抵の苦労ではなかった、と爺さんは今更のように懐古して、心に抱いたお宝をしんみりと愛《いと》おしむのだ。
爺さんは渡仙の店
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