せかけた。
 子供のいるということが妙に話を食い停めてしまう。老夫人は踏み出しのつかぬ気もちで焦れていたが、
「おしものことで、この間から相談をしてみたいと思うていたけれど、あの娘ももう年頃ですからねえ、どこか堅気なところへ嫁にやりたいと思うて……」
 話がいつかそれていた。
「急には心あたりもないけど、会社の人でどなたかいないかしら? 横尾にも話して心がけさせておきますわ」
「そうして頂けばわたしも安気ですよ。あれは小々呆んやりだけれど、まあ、気立てはよい方ですからねえ」
 それを云いながら、老夫人は自分の口を何やらよそものに感じた。

     三

 園子の持ってきた五もくを開いて遅い中食をすませたところへ唐沢氏が帰って来た。小刻みな性急な足どりで離れへ入ってきて、
「どうも、今日は眉が痒うて、珍客が来よると思っとったが、坊主だったのか」
 大きな掌で、孫のおかっぱを掻きまわすような具合に撫でていたが、食卓の上の五もく鮨を見付けると指でひと撮み口へ投りこんでおいて、
「さあ、坊主、お祖父さまのお部屋へ行こう」
 腰を屈めて自分も子供の背丈になり、手をつなぎあってチョコチョコと廊下
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