樵夫に荒い布の衣服を貰つた。
 己は無事にヱネチアに帰つた。紫色の空気を波立たせて、サン・ステフアノ寺の鐘が響いてゐた。そしてアルドラミンの家の館の古い壁に嵌めてある、血のやうな色の大理石の花形が、運河の水にうつつてゐた。



初出:「復讐」 大正二年一―四月「三田文学」四ノ一―四
原題(独訳):Balthasar Aldramin. Kurze Lebensgeschichte aus dem alten Venedig.
原作者:Henri de Re[#「e」にアクサン‐テギュ]gnier, 1864−1936.
翻訳原本:H. de Re[#「e」にアクサン‐テギュ]gnier: Seltsame Liebschaften.(Das Marmorbild. Balthasar Aldramin. Der Rivale.) Deutsch von Friedrich von Oppeln−Bronikowski. Stuttgart u. Leipzig, Deutsche Verlags−Anstalt. 1904.

底本:「鴎外選集 第十四巻」岩波書店
   1979(昭和54)年12月19日
※本作品中には、今日では差別的表現として受け取れる用語が使用されています。しかし、作品の時代背景と価値、加えて、作者の抱えた限界を読者自身が認識することの意義を考慮し、あえて発表時のままとしました。(青空文庫)
入力:tatsuki
校正:しず
2001年9月14日公開
2002年2月4日修正
青空文庫作成ファイル:
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