スに遣つた。
セルギウスは素直にそれを受けて、戸口を出た。外は闇である。家二軒程の先へ歩いて往つた時は、もう姿がパシエンカの目に見えなかつた。
近く住まつてゐる僧侶の家の犬が吠えた。パシエンカはそれを聞いて、セルギウスがまだ町を出離れない事を知つた。
――――――――――――
セルギウスは考へた。「己の夢はかうしたわけだつた。己はあのパシエンカのやうに暮せば好かつたに、さうしなかつたのだ。己は陽に神の為めに生活すると見せて、陰に人間の為めに生活した。パシエンカはつひ人間の為めに生活する積りでゐて、実は神の為めに生活してゐた。己は人間に種々の利益《りやく》を授けて遣つたやうだが、あんな事をするよりは、難有く思はせようなどと思はずに、水でも一杯人に飲ませた方が増しだつた。ちよいとした善行の方が己の奇蹟よりは好いのだ。その癖己のした事にも、神に仕へると云ふ正直な心が、少しは交つてゐたのだが。」セルギウスはかう考へて、自己を反省して見て、さて云つた。
「成程。その心もないではなかつた。只世間の名聞《みやうもん》を求める心に濁されて、打ち消されてゐたのだ。己のやうに現世の名誉を求
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