ゞとも申さずに置きました。只昔お心易くした御身分のあるお方で、今巡礼に出て入らつしやるのだと申しました。あちらのお茶の間にお茶が出してありますから、どうぞ入らつしやつて。」
「いえ。もうそれには及びません。」
「そんならこちらへ持つて参りませうか。」
「いえ。それにも及びません。パシエンカさん。あなたのわたくしをもてなして下さつたお礼は、神様がなさるでせう。わたくしはもうお暇《いとま》をします。若しわたくしの事を気の毒だと思つて下さるなら、どうぞ誰にもわたくしに逢つた事を話さずにゐて下さい。神様に掛けて頼むから、誰にも言はないで下さい。本当にわたくしはあなたを難有く思つてゐます。実は土に頭を付けてお礼が言ひたいのですが、さうしたらあなたがお困りでせうから止めます。わたくしの御迷惑を掛けた事は、クリスト様に免じてお恕《ゆる》し下さい。」
「そんならどうぞわたくしに祝福をお授けなすつて。」
「それは神様があなたにお授け下さるでせう。どうぞわたくしの悪かつた事を免《ゆる》して下さい。」かう云つてセルギウスは立ち去らうとした。
併しパシエンカは引き留めて、食パンや、菓子パンや、バタをセルギウ
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