とパシエンカは返事をした。そしてセルギウスに言つた。「まだ午《ひる》を食べてゐないのでございます。あれはわたくし共とは一しよに食べられませんので。」パシエンカはかう云ひながら立つて、何やら用をした。それから労働の痕のある、痩せた手を前掛で拭きながら、セルギウスの前へ帰つて来た。「まあ、こんな風にして暮してゐるのでございます。わたくしはいつも苦情ばかり申して、万事不足にばかり思つてゐます。その癖孫は皆丈夫で好く育ちますし、どうにかして暮しては行かれますから、本当は神様にお礼を申さないではならないのでございます。それはさうと、ほんに詰らない事ばかり長々と申しまして。」
「一体なんで暮しを立てゝゐるのですか。」
「それはわたくしが少しづつ儲けますのでございます。小さい時稽古をいたしました自分には厭であつた音楽が役に立つてゐますのでございます。」パシエンカは坐つてゐる傍にある箪笥の上に、細つた手を載せて、殆ど無意識にピアノをさらふやうな指の運動を試みてゐる。
「一時間でどの位貰ひますか。」
「それはいろ/\でございます。一ルウブルの事もあり、五十コペエケンの事もあり、又三十コペエケンしか貰はれ
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