クサンチス
XANTHIS
アルベエル・サマン Albert Samain
森林太郎訳

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)硝子《ガラス》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|言《ごん》も聞えなかつた

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「身+果」、第4水準2−89−55]《はだか》

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)処々《しよ/\》
−−

 飾棚だの飾箱だのといふものがある。貴重な材木や硝子《ガラス》を使つて細工がしてある。その小さい中へ色々な物が逃げ込んで、そこを隠れ家《が》にしてゐる。その中から枯れ萎びた物の香《か》が立ち昇る。過ぎ去つた時代の、人を動かす埃がその上に浮かんでゐる。昔の人のした奢侈の、上品な、うら哀《かな》しい心がそこから啓示《けいし》せられるのである。
 己《おれ》はさういふ棚や箱を見る度に、こんな事を思ふ。なんでも幅広な、奥深い帷《とばり》に囲まれて、平凡な実世界
次へ
全25ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
森 林太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング